人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ふくりび理事長☆赤木と事務局長☆岩岡の活動日記です。


by fukuribi
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

はさみ一本で社会・世界を繋ぐ-⑥一人のおばあちゃんと向き合い、訪問理美容を広げる決意をする

第一章はこちらから
①19年に亘る福祉理美容活動のきっかけhttp://fukuribi.exblog.jp/19439399/
②ありがとうのありがたさhttp://fukuribi.exblog.jp/19455906/

第二章
③第一の壁http://fukuribi.exblog.jp/19465218/
④地域一番店になりたいhttp://fukuribi.exblog.jp/19535345/
⑤飛び込み営業で突然始めた「訪問理美容」http://fukuribi.exblog.jp/20800324/

⑥一人のおばあちゃんと向き合い、訪問理美容を広げる決意をする

4月になり、初めて一人で介護施設へ足を踏み入れた。

そこで、僕は驚愕の事実に出くわす。
「老人ホームカット」
女性も男性もみんな一緒の後ろ姿、刈り上げて短いスタイル。
介護度の高い入居者は、介護職員が、男女問わず丸坊主にしていた。

鏡も無い部屋で、その人らしさや希望は聞かずに、介護しやすい短い髪にしてしまっているのだということに気づいた。

まず、介護職員との感覚のズレを感じた、「短くなればいいから、早くやって」と言われた。
「はい、早く、そして可愛くしておきます」と言って、持ってきた鏡を目の前に立てかけて、即席のカットスペースを作った。

暴れながら、カットを嫌がり、泣き叫ぶおばあちゃんと出会った。
「この人ボケているから大変だけど、よろしくね」と意地悪そうに職員さんが言った。
入所したばかりの、そのおばあちゃんは、職員さんが言うように、確かにボケていた。
話は噛み合わないし、首もグラグラ動くし、認知症(当時は痴呆老人と呼ばれていた)の方とお話するのも初めての僕は、戸惑いながらも、鏡を見せてこういった。
「今日はどんな風にカットしましょうか?ご希望を聞かせてください」と

「みんなと一緒の老人ホームカットは、嫌だ!!!」

認知症が進んでいても、鏡で自分の髪型を見て嬉しそうにしたり、眉カットしてあげると恥ずかしそうにしたり、「何だ、ちっともボケていないじゃないか」と僕は思った。

次の月に訪れると、僕の事を覚えてくれていて
「兄ちゃん、兄ちゃん、髪型気に入ったよ、ありがとう」と言ってもらった。
年をとっても、障害があっても、お客様はみんな、綺麗になりたいと思っていて、それは
当たり前のニーズだけど、介護の現場ではまだまだ難しいことなのかもしれない。
もちろん、介護の現場では、衣食住の支援、病気や他の問題は山積み。

でも僕は、介護の現場でいつか「理美容や外見のサポートって大事!」と言ってもらえる日まで、それを続けていくことを決めた。

その後、介護についての勉強を重ねる中で、認知症になって、記憶が曖昧になってきても、「行動記憶」は比較的最後まで残るということを知った。

美容室・理容室でどうしていたか、パーマ液やポマードの匂い、頭を触られる感触、ハサミの音を、人間は最後まで覚えているということだ。
だから、認知症で周辺症状が酷い方も「パーマ屋ですよ、○○様、今日はパーマかけましょうか?」と声をかけると「ええ、そうしてちょうだい」とマダムのような表情で落ち着いて、クロスを巻かせてもらえる事もある。
「福祉理美容」
人の記憶の中に、最後まで残る素敵な仕事をしている。
そう毎日感じている。
はさみ一本で社会・世界を繋ぐ-⑥一人のおばあちゃんと向き合い、訪問理美容を広げる決意をする_a0105397_1616677.jpg

第三章
⑦第二の壁 につづく…
by fukuribi | 2015-01-31 16:19 | ふくりびのつぶやき