ふくりび理事長☆赤木と事務局長☆岩岡の活動日記です。


by fukuribi
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12月22日読売新聞掲載記事

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髪おしゃれに 81歳の笑顔


鈴木さんの髪をカットする平林さん(愛知県日進市で)=川口武博撮影

 「新婚旅行で行ったタイでゾウに乗ったんですよ」

 「私の時代は海外なんて……。熱海だったわ」

 美容師の平林舞子さん(24)は今月10日、愛知県日進市の鈴木和子さん(81)宅で、はさみを動かしながら、耳元で話しかけた。NPO法人「全国福祉理美容師養成協会」から派遣された。初めての一人だけでのカットだ。「切りすぎるなよ」「すくだけだぞ」。理事長の赤木勝幸さん(39)が、鋭い視線を投げかけた。

◆  ◆  ◆

 実家の近くに、化粧を忘れず、小ぎれいなおばあちゃんがいた。よく家に行って、お菓子を食べながら、学校のことを話した。そのおばあちゃんが中学3年生の時に入院し、秋に74歳で亡くなった。ほお骨が浮き上がるほどやせ、笑顔が消え、「女じゃない」と悲しそうな横顔を見せた。何もしてあげられなかったのが、心にひっかかっていた。介護福祉士として老人ホームに就職したのも、おばあちゃんの影響かもしれない。

 2003年の夏、ボランティアがお年寄りに花柄の浴衣を着せ、平林さんが化粧を施したことがあった。いつもは背中を曲げ、手押し車に寄りかかっているお年寄りが、背筋を伸ばして歩き、洗面台の鏡に映った姿を見てはにかんだ。怒りっぽかった別のお年寄りは、化粧をすると表情が和らいだ。「きれいだね」と声をかけると、「あんたもきれいだがね」。

 おしゃれの大切さを実感した。「美容師ならお年寄りのおしゃれ心を満足させられるのでは」と思った。死んだおばあちゃんも喜んでくれるような気がした。

 老人ホームを辞め、05年春に美容学校に入学。午前中は二つの老人施設でアルバイトし、夕方から学校に通う生活を2年間続け、今春、国家試験に合格した。

 赤木さんの存在は学校の張り紙で知った。愛知県日進市で理美容店を経営する傍ら、訪問理美容のボランティアを10年以上続けていた。「自分がきれいにしてあげられるのは頑張っても月300人」と、後輩の育成にも尽力していた。迷わず赤木さんの店に就職した。

 休日を利用して訪問理美容を続け、赤木さんが11月にNPO法人を発足させると、理美容師には車いす上での姿勢の直し方、介護福祉士にはシャンプーの仕方などの講義をしている。

◆  ◆  ◆

 鈴木さんのカットにかけた時間は約30分。「座っているだけで体力が奪われるから」と、15分ほど短縮した。

 こんな時も介護福祉士の経験が生きる。「家でやってもらうと落ち着くわ」。鈴木さんはそう言って、お礼に柿をくれた。

 名古屋市天白区の自宅には、おばあちゃんの形見の洋人形が飾ってある。「初めて一人で訪問理美容をしたよ」。人形にそう報告した。体調を気遣いながら、整髪ができる美容師になりたい。「夢が目標になった」と思う。

 もらった柿は、もったいないような気がして、1週間以上もテーブルの上に置いたままだった。(館林千賀子)

(2007年12月22日 読売新聞)
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by fukuribi | 2008-01-04 02:08 | 実績のご紹介